作品とプレゼンテーションボードを並べた校舎1階のマルチ・スペースは、スタート前から熱い雰囲気に包まれていました。(画像のクリックで拡大表示します)
インテリアデザイン科II部では、毎週、月・水・金の18:30〜21:30に授業を行なっています。学生たちは、昼間は仕事を持ちながら、限られた時間の中、真剣にインテリアデザインを学んでいます。
10月7日(金)の授業では、2年生11人による「座るデザイン」のプレゼンテーションが実施されました。
このプレゼンテーションは、インテリアデザイン科II部2学年の前期課題の一つ、「座るデザイン」の集大成。
同学科では毎年の恒例行事で、今年も卒業生を招いて、にぎやかに行なわれました。
プレゼンテーションの目的は、次の二つ。
・通常の講評とは異なる緊張感の中でのプレゼンテーションを体験する。
・在校生と卒業生の交流を促し、就職や協業、情報交換などの機会をつくる。
5月30日(月)にオリエンテーションが行なわれ、その後、基本的には毎週月曜日の授業で、アイデア、原寸スケッチ、原寸模型制作、中間発表、実作と、夏休みをはさんで10月5日(水)の提出まで、約3ヶ月間かけて「座るデザイン」の作品制作に取り組みました。(自作、外注の選択は自由)
そしてこの日、提出された11作品のプレゼンテーションが行なわれたのです。
当日は、OB、OGの方々はじめ多数のゲストの方々にも参加いただきました。
<参加卒業生>
・27期(2004年)卒業生 矢ケ崎 やよいさん、野崎 雄太さん、森山 哲也さん
・28期(2005年)卒業生 勝間田 慎也さん
・31期(2008年)卒業生 有村 勇さん、菊地 俊孝さん
・33期(2010年)卒業生 伊藤 光俊さん、山田 達也さん
・34期(2011年)卒業生 岩本 美里さん、渡辺 幸菊さん
また、OGの矢ケ崎 やよいさんのご友人で、フィンランドから来日中の建築家セッポ コホ(Seppo Koho)さん(Secto Design)も飛び入り参加。
学生たちのプレゼンテーションに対して、「こうすれば、もっとよくなるのでは?」という視点でコメントしてくださいました。
その他、学校説明会に参加された方や同学科の1年生も見学。
作品とプレゼンテーションボードを並べた校舎1階のマルチ・スペースは、スタート前から熱い雰囲気に包まれ、三々五々集った学生、講師、ゲストたちが、作品に見入りながら、すでにあちこちで議論が始まっていました。
まず、担当の江口 勲先生より、この「座るデザイン」という課題についての説明があり、続いてプレゼンテーションが始まりました。
司会は細川 万紀子先生、撮影記録係は高桑 平和先生です。
最前列には、秋山 修治先生、伊藤 雅春先生、江口 勲先生、杉浦 宏幸先生、根本 惠司先生、山本 有子先生、横堀 健一先生が着席し、ちょっとした緊張感が漂います。
一人あたりの持ち時間は10分程度で、まずプレゼンテーションを行ない、続いて講師、ゲストの方々による講評という流れです。
プレゼンテーションの合間には、OB、OGたちからコメントをいただいたり、OBの菊地 俊孝さんに飛び入りでプレゼンテーションしていただいたりで、夜更けまで交歓の輪は途切れることはありませんでした。
それにしても、わずか1年半で、ここまで “らしく” できるようになるとは、感激もひとしお。今年は特にバラエティ豊かで、かつ自作する学生が多く、見応えのある作品ばかりでした。
限られた時間をやりくりして学ぶ同志だからこそ、学生たち、卒業生たち、そして講師たちの縁はより強く深くなるのでしょう。
また一つ大きな経験を得た学生たち。2年生のみなさん、統括の小林 太加志先生、おつかれさまでした。そして先生方、参加されたゲストのみなさま、ありがとうございました!
■プレゼンテーション作品(発表順)
木村 麻人さん「出汁」
行本 友昭さん「千姿万態・多種多様」
篠原 綾さん「chocon」
ナホルノワ ナタリアさん「D-chair」
山下 慧さん「カドイス」
林 浩平さん「GRAPHICAL CHAIR」
後藤 薫子さん「水引椅子」
兼田 真澄さん「MIKURAJIMA CHAIR」
髙田 ちひろさん「FolD chAir」
殿守 直人さん「♡」
大本 健太さん「Symposion」
木村 麻人さんの作品「出汁」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「不思議なタイトルと思われるでしょうが、人間関係や記憶といったふわふわ、もやもやとしたもの、その浮遊感を複数の天然素材を使い、軸をずらすことで表現しました。実家にあったパイプも素材に加えました」(木村さん)
<講評>
砂の座面は座りにくそうだね。なぜ使ったの?(秋山先生)
「明確な理由はありません」(木村さん)
イスには、工業製品とクラフトという方向があるよね。先ほどの質問には、そういう説明が欲しかったんだよ。(秋山先生)
最初から座り心地を追う作品でないとは思っていた。ディテールなど、組み合わせの工夫はもう少し欲しかったな。(江口先生)
シンプル、ストレートに考えて、省くものを省くと、伝えたいものがもっと伝わりやすいのでは?(山本先生)
イスのようだけど、ビルのスモールスケールモデルのようにも見える。このイスに座ったことはある?(ゲストのセッポ コホさん)
「一度だけ(笑)」(木村さん)
コンクリートは、座るにはいい素材ではないね。イスなら機能も必要なのでは?(ゲストのセッポ コホさん)
<1年生へのコメント>
「自分で作ると、作っているうちにいろいろ気付きがあります。時間に余裕を持って制作すれば、詰めることもできます」(木村さん)
行本 友昭さんの作品「千姿万態・多種多様」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「座って何をする? から考えはじめました。休憩する、本を読む、タバコを吸う…座ったまま、そこにあるモノを使ったり、置いたり。座る以外にも、そんな機能があるといいなと思いました。また、一面一面表情を違えて、好きな面を選べるようにしたり、好きなものを好きな場所に置いてもいいと考えました。アクリルで作りましたが、黒(の塗装)はちょっとまずったかも」(行本さん)
<講評>
プロセスを見ていたけど、途中から随分変わったね。その変遷をここでみんなに教えてくれる?(江口先生)
「面だけを考えていましたが、強度を出すことと、透視感、奥行きを作りたかったんです。素材をアクリルにしたのも同じ理由です」(行本さん)
黒の透明がかっこいいと思った。和風な感じもして、デザイン的によく練られているよね。(伊藤先生)
色のスタディはしたの? 黒はアクリルには見えない。アクリル素材なら、アクリルっぽく見せた方がいいんじゃない?(根本先生)
例えば、ポップな蛍光カラーとかかわいいじゃない? 素材のよさを引き出す色をもっと考えてもよかったのでは? 重く見えるのが残念。(山本先生)
イスとも言えるがこれは “台”。台を考えるということでは、いい視点だね。(江口先生)
<1年生へのコメント>
「外注にするのか自分が作るか早めに決めた方がいい。自分で作るなら、いろいろ試行錯誤してみることが糧になります」(行本さん)
篠原 綾さんの作品「chocon」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「母が地元でやっているカフェのためのイスです。カフェは公園に面しており、公園から立ち寄っていただき、腰掛け的にコーヒーを飲んでお休みいただくイメージです。公園の遊具をイメージし、いろいろ試作してみました。実作したのが、このブランコのイメージのものです。2人が腰掛けられて、足掛けを動かすと(ブランコのように)摩擦で音が鳴ります」(篠原さん)
<講評>
テーマを決めて展開するという作り方、まとめ方に好感が持てる。もっといろんな作り方ができそうと模型を見て感心した。(横堀先生)
色はこれ(黄色みを帯びた濃茶系)でいいのかな?(根本先生)
「公園は桜の名所です。桜の樹とのマッチングを考えて、この色に決めたんです」(篠原さん)
篠原さんは、最初からカフェで使えるものを作りたいと言っていた。置く場所を明確にしていたから、ここまで進化できたんだと思う。安全性にも注意して進めていた。(江口先生)
置く場所にマッチするよい造形だと思う。公園のカフェという一カ所だけを考えたようだが、バス停や駅、公共の場など、さまざまな場でも展開できそうだね。(ゲストのセッポ コホさん)
<1年生へのコメント>
「外注で作りました。外注は、自作と違って途中で変更がききづらかったです。とはいえ何度も変更していただきましたが。状況確認も頻繁にはできません。ちなみに見積りに1週間、制作には2〜3週間かかりました。早めに案を固めて、余裕を持って進める必要があると思います」(篠原さん)
ナホルノワ ナタリアさんの作品「D-chair」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「イスづくりには、じつは興味がありませんでした。一から作るのではなく、リユースを考えました。最初は芝生に座るというので座面を芝生にすることを考えてみたのですが、折り畳むとどうなる? という話になり、それでダーツ盤にしてみました」(ナタリアさん)
<講評>
イスとダーツ盤、2つの機能を持っている。それ以上でも以下でもないね。(杉浦先生)
「それでいいんじゃないですか(笑)」(ナタリアさん)
黒いパイプの脚をヒモで巻いて部分的に装飾しているから、それ以上のものをつくりたい気持ちを感じるよ。(杉浦先生)
アイデアは面白いが、座るデザインとしては、この座面はどうだろう。既製品のダーツ盤ではなく、自分で作るとか、座り心地をもっと考えてほしかった。(江口先生)
<1年生へのコメント>
「私のように、最初、興味を持てなくても、自分で考えれば作品はできます。それに、やっているうちに興味が出てくるかもしれませんよ」(ナタリアさん)
山下 慧さんの作品「カドイス」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「柱のような出っ張り面の角に置くイスです。公共施設、百貨店の休憩スペースなどの角には何も置いていないところが多いので、こういうイスがあればと考えました。形は柳宗理のバタフライスツールのイメージから。インテリアマイスター科の田村先生に教えていただきながら自作しました。角度の数値を計算で出すのに3週間ほどかかってしまい、制作は1週間ほどで仕上げました」(山下さん)
<講評>
まずはよく自作したね。仕上げの工夫など改善の余地はあるけれど、それにしてもここまで仕上げて、よくやったね。(杉浦先生)
逆に引っ込んだ面の角に置くイスも合わせて考えてみない? “凸と凹” “男と女 威張るイスと女性らしく守ってくれるイス” みたいな対で考えてみても面白いんじゃないかな。(ゲストのセッポ コホさん)
<1年生へのコメント>
「自作で一から角度を出すとか、大変でしたが勉強になりました。機会があれば、ぜひ自分でやってみて欲しいです」(山下さん)
林 浩平さんの作品「GRAPHICAL CHAIR」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「天童木工の図書館イスのリ・デザインです。複数のイスが並ぶ様子を植物の増殖になぞらえました。イスの絵柄は示温インク(体温で色が変化し透明になる)で、4脚揃えば一つの絵になるようになっています。素材はタモ材。ソープフィニッシュで仕上げているので、子供にも安心です」(林さん)
<講評>
示温インクは高いんでしょう。(根本先生)
「40万ほどかかるようです」(林さん)
アイデアはいいけど、実現レベルで考えられると、よりよいね。柄も検討の余地がありそうだね。アイデアのように4つ並んでいると楽しいけど、イスは必ずしも4つセットで並ぶわけでもないから、そのあたりも検討できるとさらにいいものになるんじゃないかな。(根本先生)
きれいだねー。これだけ作れるならいい家具職人さんになれそう。ツラ合わせとか、いろいろ学んだことでしょうね。(秋山先生)
<1年生へのコメント>
「作るものにもよると思いますが、一度は木工家具を作った方がいいと思います。木目の方向によって折れやすい向きがあるとか、かんなの掛け方とか、やってみるといろいろ勉強になります。それに、もの作りは単純に楽しいですよ!」(林さん)
後藤 薫子さんの作品「水引椅子」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「職人の技を活かす場が減りつつあることに寂しさを感じ、今までと違う使い方を模索しました。伝統素材である水引をイスに用いるとどうだろうという発想からこのイスが生まれました。素材を活かしたいのでシンプルなデザインにしました。冠婚葬祭のフォーマルなシーンで使っていただきたいです」(後藤さん)
<講評>
シンプルなデザインの中に微妙に座面に角度がついていて、そのラインが優しさを感じさせている。微妙なところに表情があり、語りかけてくる感じで非常にいいと思う。(横堀先生)
美しい。水引が傷まないように、底面をちょっと上げるとよさそうだね。(秋山先生)
素晴らしい。色の選び方をさらに検討すると、もっと完成度が高まるのでは?(ゲストのセッポ コホさん)
<1年生へのコメント>
「自作を考えている人には、この実習はいい機会になると思いますよ」(後藤さん)
兼田 真澄さんの作品「MIKURAJIMA CHAIR」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「夏休みに旅行した御蔵島、八丈島で、植物の増殖する力強さに感激しました。それをこのイスで表現しました。元々家にあったイスのリメイクです」(兼田さん)
<講評>
オブジェとしては面白い。座るにはかなり決意する必要がありそうだね。安っぽくなるかならないかギリギリな感じ。(伊藤先生)
発想、造形、機能。自分ではこれでよかったと思う? 美しかったイスが、不気味さを感じさせるものになったようにも受け止められそうだね。(江口先生)
<1年生へのコメント>
「家で一人で作りましたが、時間をやりくりするのは大変でした。1年生のみなさん、この課題は大変だと思いますが、がんばってください」(兼田さん)
髙田 ちひろさんの作品「FolD chAir」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「家が狭いので、邪魔になるものは作りたくない。また、材料代や外注に出す予算もないので、安くて家で一人で作れるイスをと考えて、この折り畳みイスとしました。外でも使えるものにしたかったので、素材はプラスチック段ボールを使用し、補強のために周囲をゴムチューブで囲いました。作ってみて誤算だったのは、組み立てたイスを留めるマグネットが、プラスチック段ボールに負けることです」(髙田さん)
<講評>
シンプルで素材の使い方も上手。留め方を工夫すれば売れるんじゃない? 本箱にしまえるし、サイズ展開も容易。いけるな、かなりいいなと思う。(根本先生)
惜しむらくは色のコンビネーションだわね。素材に色のバリエーションがなかったのかもしれないけれど、今の色は横浜中華街みたいね」(山本先生)
他にこういうのがなければ、いいアイデアだと思う。好きです。棚にしまえるし、持ち歩けるのはいいアイデアですね。すぐプロダクトにできそうです。(OBの勝間田 慎也さん)
<1年生へのコメント>
「はじめから自分で作ろうと思って取り組みました。チープな素材ですが、それも味だと思っています。お金と時間に制約がある中でも、自分ができることを考えればいいものができると思いますよ」(髙田さん)
殿守 直人さんの作品「♡」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「ハートの持つ “愛情” “恋” そんな気持ちを日々感じさせたいと、この形になりました。自分の部屋と、学校の工房で自分で作りました。
あえて赤くは塗らず、曲面の白木成形合板どおしを黒いネジで留めただけです。もう少し薄い作りにすれば、荷重によってたわんで座り心地がいいのでしょうが、厚すぎてたわまないのが残念です」(殿守さん)
<講評>
よく作ったと思う。スタイロフォーム(発泡体)で成形合板の型を作るのは、僕も気が付かなかったなあ。イスとしては、お尻がのっかるだけで機能は果たせていないけれど、それにしてもよく作ったよね。(秋山先生)
正直、難しいと思ったけど、よくやったよね。よく完成までこぎ着けた。(江口先生)
逆さまにした方が座りやすそうだね。 “ガーリックチェア” とかね。それから、制作のプロセスでスタイロフォームに板を巻き付けた型も置いているけど、その形が面白いね。立てかけて座ってみるとかもありなのでは?(ゲストのセッポ コホさん)
<1年生へのコメント>
「自分で作るのは、何度も失敗するものです。でも最後まで諦めずにやってほしい。そうすれば結果は出るでしょう。また、失敗も肥やしになると思います」(殿守さん)
大本 健太さんの作品「Symposion」(画像のクリックで拡大表示します)
<プレゼンテーション>
「『(プラトンの)饗宴(シュンポシオン)』によると、かつて男女は背中合わせの一体だったといいます。神が男女を2つに切り離したため、失われた半身を互いに求めるようになった。ここに着想を得て、座ると身体が包み込まれて一つになるイスというコンセプトを考えました。自分としては、もっと座るとおおわれて暗い中に居るイメージにしたかったのですが、そうはならなかったです」(大本さん)
<講評>
赤と白という色には意味があるの?(横堀先生)
「全部白くしようとしたら、ぼんやりしてしまった。それで、中は力が湧き出る感じにしようと赤にしたんです。胎内的というよりは、精神的な意図です」(大本さん)
神話的な世界観を、よく形にしたね。(横堀先生)
イタリアのデザイナーの作品みたいだね。アートの領域だね。(秋山先生)
家具と言うより空間だよね。物語を連想させる。舞台美術にありそうだよね。(伊藤先生)
<1年生へのコメント>
「友人のアトリエを借りて自分で作ったのですが、大きさは考えた方がいい。でかすぎて、搬入時に学校に入らないかと思いました(笑)。もしみなさんが外注を選ぶなら、予算と期間に制約があるので、考えた方がいいですよ」(大本さん)
最前列には先生たちが着席し、ちょっとした緊張感が漂います。(画像のクリックで拡大表示します)
プレゼンテーションの合間には、OB・OGたちからコメントをいただきました。(画像のクリックで拡大表示します)
学生たち、卒業生たち、そして講師たちの縁はより強く深くなっていきます。(画像のクリックで拡大表示します)
■総評
<秋山 修治先生>
今年の特徴として、外注に出さずに自作する人が多かったようです。外注と自作、どちらがいいというのではないが、それぞれ経験で得た学びを次に活かしてほしい。作品は、デザイン、クラフト、アートと、非常にバラエティに富んでいたのも特徴的でしたね。これでよしと満足するのでなく、もっと自由にやっていいし、失敗していい。講評する立場としても、プレゼンテーションを大いに楽しめました。ありがとう!
<江口 勲先生>
課題内容の自由さがいろんな表現につながり、結果、個性を発揮してもらえたと思います。また、自作が多かったのも、今年の傾向としてありましたね。
<OBの森山 哲也さん>
1作目(出汁)と5作目(カドイス)が気になりました。特に「カドイス」は、仕上がり、発想が素晴らしい。カドに沿わせたシンメトリーな形をボルトで固定していたけれど、もっと工夫があってもいいと思いました。
<OBの野崎 雄太さん>
1作目(出汁)の作品が魅力的だと感じました。この作品を見て、当時の自分の課題を思い出しました。先生の質問に、その場で明確に答えられないかもしれないけれど、今あるこの形は自分で考えてやったこと、自分らしさが出ているはずです。今、自分の卒業作品を見直してみてそう思います。ぜひ自分の思いや自分らしさを突き詰めていってください。それにしてもみなさんレベルが高く驚きました。
<OBの勝間田 慎也さん>
先日、某大学がozoneで行なっていた、やはり同じイス制作課題の展覧会を観に行きましたが、こっちの方が断然面白いです(笑)。
どの作品にも言えることですが、仕上がりや見せ方は重要だと思います。自分で作ると、どうしてもアラが出てしまうものですが、今回の自作は作りもいいですね。個人的には2作目(千姿万態・多種多様)がかっこいいと感じました。
<OGの岩本 美里さん>
自分で作っている方が多くてすごいなと思いました。学校にはせっかく工房があるのだから、活用しない手は無いし、いい経験になったことでしょう。個人的に興味があったのは、プラ段ボールのイス。細かく縫うのは大変だったと思うけど、低コストで、例えば子供のワークショップとかに使えそう。また、シュンポシオンのイスのような大作を作りたくなる気持ちはわかります。こういうのはディテールまで完璧にやりきれば先生方を納得させられると思う。来年も、ぜひ参加したいと思いました。
<OBの菊地俊孝さん>
みなさんのプレゼンテーションをうかがって、作品ができていくストーリーがしっかりしていて、すごいなと思いました。自分もストーリーを意識して、より人に伝わるプレゼンができるように心がけようと思いました。
<OBの有村勇さん>
刺激になりました! 今年は自作が多かったということで、自作か外注かということが話題になりましたが、それぞれ利点があると思うので…。自作は職人をめざすならいいでしょうし、一方、外注だと完成度の高いものができるメリットや、打合せや図面等で人に伝わる書き方や伝え方を学ぶことができますし。今から月1万円ずつ貯金しておけば、余裕で外注できるでしょう。(笑)
<OBの菊地俊孝さんの卒業制作のプレゼンテーション>
僕は卒業制作は外注、イスのこの授業では自作と、両方を経験しました。外注で意図通りのものを作るには、意思疎通、業者さんとの付き合い方がポイントになってきます。いいアイデアをいただくこともできると、完成度はより高まります。一方、自作は、経験値が増えますから、どちらもそれぞれ意義があると感じます。